劇団大樹 公演歴 (主宰コメント)


旗揚げ公演 1995年10月17日(木)〜22日(日) 作/演出:杉山 龍

「未来に賭ける」
於:銀座小劇場

出演:川野誠一 高橋恵美子 堤伸正 田倉麻衣子
   荒川尚史 大原かおり 森永雄二 上田 剛


劇団大樹の旗揚げ公演。何もかも初めて尽くしの中、全員が100%の力を出し切った作品でした。まだまだ荒削りで若さが目立ちましたが「いつかきっと・・・」そんな想いを込めて上演した僕等の精一杯でした。旗揚げ公演にふさわしい作品であったと思います。この戯曲の原題(第1稿)は「誕生〜新しい生命のために〜」。そのタイトルから作/演出である杉山の、劇団に対する熱い想いが感じられたのを覚えています。この年は「阪神淡路大震災」や「地下鉄サリン事件」など忌まわしい災害/事件が続きました。そんな年に、劇団大樹は誕生したのですね。本当に、この1995年は、色々な意味で生涯忘れられない年となりました。確か野茂投手が大リーグで新人王を獲得したのもこの年です。

    


第2回公演 1996年9月27日(金)〜29日(日) 作/演出:杉山 龍

「青空のみえる町」
於:南阿佐ヶ谷・アルテ・パティオ

出演:大沢淳一 田倉麻衣子 池上真弘 上田 剛
   小宮山徹 森永雄二 沢野まさみ 荒川尚史


「青空を見上げると太陽が暖かく微笑みかけ、雲は風にまかせて漂っている。そんな町に僕達は住んでいる」。そんなキャッチコピーを持つこの作品は“青空町シリーズ”の第一作目として書き下ろされた作品でした。舞台となる「青空町」は、杉山の描く架空の町であり、東京都の一角にある“青空の似合う町”という設定となっています。杉山曰く「いつも心に青空を」そう思い書き上げたそうです。ただ残念ながら、二作目を上演する事はありませんでした。オープニングが印象的な演出で僕自身は気に入ってる作品です。この公演には僕は出演していません。制作の仕事に駆け回っていました。止むを得ない事情からでしたが、本当に悔しい思いでしたね。劇団員の上田剛、客演の池上真弘が良い味だしてました。
    

第3回公演 1997年3月20日(木) 作:J.P シャンリィ 演出:杉山 龍 構成:川野誠一

「ダニーと紺碧の海」
於:現代座ホール

出演:川野誠一 田倉麻衣子 上田剛 沢野まさみ(声)


劇団大樹が初めて挑んだJ.P シャンリィの翻訳劇です。もともとは稽古用の台本として準備したものだったのですが、余りに素敵な作品だった為、本公演として上演する運びとなりました。かなりのエネルギーを必要とする作品で、キャストもスタッフも本当に大変でした。そこに更にオリジナルの序章と終章を僕が追加したものですから・・・でもそれだけに大きな手応えを感じた公演でした。この作品は、後の大樹の芝居に大きな影響を与えます。本当にこの時期にこの作品を上演して良かったと思っています。また、この公演では僕が書いた詩「0と1の可能性」が、年老いたダニーの台詞として使われました。原作にはないシーンですが、上田剛が見事に演じ切り、良いシーンに仕上げてくれました。
    

第4回公演 1997年7月25日(金)〜27日(日) 作:山崎哲史  演出/構成:川野誠一 

「やっぱりお前か!?」
於:南阿佐ヶ谷・アルテ・パティオ

出演:川野誠一 沢野まさみ 田倉麻衣子 上田 剛 山崎裕子 石原直奈 中田未帆


作者の山崎哲史は、中学高校時代の同級生です。この作品で、僕は初めて演出に挑戦し、音楽の永野浩資と共に作詞/作曲にも挑戦しました。また、ある日の稽古場で偶然知り合ったダンスグループ「ヤラマラナラジラ」が特別出演して下さり、歌あり踊りあり芝居ありの賑やかな舞台を実現させる事が出来ました。思いつく事を思いつくままに演り倒す事が出来た公演と言えるでしょう。これ程ハイテンションに駆け抜けた公演は、後にも先にもありません。劇団に翳りが見え始めた時期でしたので、必死に新たな方向性を模索していたのだと思います。しかし残念ながら「劇団」としては、これが最後の作品となってしまいました。
    工事中

第5回公演 1998年11月27日(金)〜29日(日) 作:J.Pシャンリィ 演出:川野誠一

「マンハッタンの女たち」
於:南阿佐ヶ谷・アール・ヴィゴ

出演:沢野まさみ 小宮山佳代 橋本潤子 せんべ 川野誠一


僕の大好きなシャンリィ作品です。過去に上演した思い出深い作品を挙げろと言われれば、間違いなくこの作品を選ぶでしょう。既に、大樹の旗揚げメンバーは僕だけとなっていましたが、先輩や仲間達の協力や励ましに支えられ上演が叶いました。人の優しさがこれほど身に沁みた事はありません。この公演から、劇団大樹は“プロデュース公演”への移行を試み始め、僕が製作総指揮者となりました。この作品で僕は再び演出に挑戦、舞台美術にもアイデアを出して行きました。ただ黒人のプレイボーイ「デューク」を演じながらの演出は本当に苦労が耐えず・・・やはり僕はプレイヤーであると痛感させられた舞台となりました。ただ主演三人の女性関係はとても面白く表現出来たと思います。実際とても良い評価を頂いた公演でした。中でもジュディ役の橋本潤子の表現力は素晴らしかったですね。いつか同じキャストで再演してみたい作品です。
    工事中

第6回公演 2000年3月23日(木)〜24日(金) 作:J.P シャンリィ 演出:山口あきら

「ダニーと紺碧の海」
於:ティアラこうとう・小ホール

出演:川野誠一 高山佳音里


第一回ティアラ演劇祭に参加した作品です。当時、稽古場として使用していたティアラさんから「愛をテーマにした演劇をやって欲しい」とのお話を頂き、迷わずこのダニーの再演を決めました。上演形態もキャストもスタッフも“初演”とは全く違う舞台となっています。特にこの公演からお招きした演出家/山口あきらさん(青年座)のお力添えは大きかったですね。繊細かつ力強い“演出力”で新しい大樹のカラーを打ち出して下さいました。一新されたスタッフ陣の働きも見事なもので「あぁ、これがプロと言うものか」と痛感させられました。この公演では、劇団昴の高山佳音里さんに相手役のロバータを演じて頂きました。彼女の役の解釈や表現からは、これまでの僕の演技にはない“高み”みたいなものを感じさせられました。素晴らしかったと思います。初演でロバータを演じた田倉麻衣子も終演後「あれはロバータだったよ!」と驚嘆してましたからね。僕自身の力不足は否めませんが、本当に充実した舞台でした。是非またダニーを演じてみたいものです。
    工事中

第7回公演 2005年12月14日(水)〜18日(日) 作:み群杏子 演出:山口あきら

「ポプコーンの降る街」
於:スタジオ・アキラ

出演:川野誠一 宮田智子 桜澤 凛 山田 純 牧口元美


5年間の活動休止期間を経て“劇団大樹10周年記念公演”として上演した作品です。ある舞台で共演した女優さんから、偶然読ませて頂いた戯曲がこれでした。読んでいると心の温度が上がって行くような世界観に魅了され、僕はこの戯曲の作者にすっかり心酔していたのです。しかし、その台本には何故か“作者名”が書いておらず、誰に聞いても作者は分からず、上演のしようが無かったのです。何年か経って僕はインターネットを始めました。たくさんの劇団がホームページを立ち上げ、WEBの発信力が小さくない時代になりました。そんな中、僕はネット上で再び「ポプコーンの降る街」と出会ったのです。これが僕と“み群杏子”さんの運命的な出会いです。この公演には、演劇界の大先輩である「発見の会」の牧口元美さんがお力添え下さったばかりか、み群杏子さんも大阪から足を運んで下さいました。僕にとって忘れる事の出来ない大切な大切な作品です。

第8回公演 2006年12月13日(水)〜17日(日) 作:J.P シャンリィ 演出:山口あきら

「お月さまへようこそ」
於:スタジオ・アキラ

出演:川野誠一 田中香子 三好孝之 平野めぐみ 古木知彦 柴田かよ 山田純


この作品は、僕が劇団主宰者として“人生のノルマ”の如く上演を切望していた作品です。たくさんの劇団に上演される戯曲なのですが、どの劇団の上演を観ても、僕の考えるものには程遠く、歯痒い想いは募るばかりでした。しかし、6本の短編による“オムニバス形式”のこの戯曲を上演する為のキャスティングは難しく、大樹としてもこれまで“小公演”として「赤いコート」「喜びの孤独な衝動」の2本を手掛けるのが精一杯だったのです。しかし“10周年公演”を終え、客演の日々を振り返って見れば、僕には既に十分な出会いがある事に気付きました。そして素敵な出演者に恵まれ、この年、念願の上演が叶ったのです。劇評の賛否は激しく割れましたが、こんなに喜んで頂けた作品もありません。自分らしく演り倒す事ができた劇団大樹の“代表作”と言える作品です。この作品は、僕の中にも大きな変化をもたらしてくれました。僕はこの作品に“ありがとう”と言いたいです。


小公演プロデュースvol.5 ドラマリーディング 2007年12月14日(金)〜16日(日) 

脚本:み群杏子 演出:山口あきら 製作総指揮:川野誠一


「月と語りとアンサンブル」
於:スタジオ・アキラ

出演:川野誠一 田中香子 平野めぐみ 竹内ちさ子 納谷六朗
月の精:宮田智佳 花美術:横井紅炎(草月流華道家) 
音楽:彩愛玲(アイリッシュハープ)



この公演は、劇団大樹がプロデュースする“み群杏子さん”のプロモーション公演とも言えます。み群作品を大樹公演の軸にして行こうと決意した時期でしたし、その独特な世界観をどうやって表現して行くのか、そんなことを模索した実験的な公演が「月と語りとアンサンブル」です。「月」は女性の象徴であり、僕にとってのみ群杏子さん。「語り」はベースとなる上演スタイル。「アンサンブル」という言葉には“小規模な編成”という意味もありますが、刻々と姿を変える月の変化を、移り気さ儚さに例え、また作品の組み合わせの妙とし、それを俳優達によるアンサンブルと比喩しました。上演形態はあくまで“朗読劇”ですが、目指す所は「語り手」+「月の精」+「生演奏」のアンサンブルが織り成す、新しい朗読劇です。この公演を経て、み群さんの世界を花と生演奏で彩るというスタイルが確立しました。ハープ奏者の彩愛玲さん、草月流華道家の横井紅炎さんをお招きしての公演でした。月の精を宮田智子さんが好演。


第9回公演 2008年12月10日(水)〜14日(日) 

作:み群杏子 演出:山口あきら 製作総指揮:川野誠一


「ひめごと」
於:てあとるらぽう

出演:おぎのきみ子 柿森ななこ 川野誠一 戸張智春 納谷六朗
花美術:横井紅炎(草月流華道家) 音楽:荒井美帆(二十五絃箏)


動員数が400を超え、これまでの小さなスタジオを飛び出しての公演でした。この「ひめごと」の上演を決めた思いのひとつに、登場人物の中に見え隠れする“孤独の力”つまり孤独であることを恐れない魂に強く惹かれるものがあったからです。この物語に登場する人物たちは、みな孤独であり、群れることなく、それぞれが単独者として人との関わりを営んでいます。それはあたかもアンサンブルでありながら、一人一人が独立した存在である「能楽」の如く関係に僕は感じました。そんな思いと重なるように、舞台コンセプトも「能舞台」を意識したものに。花美術の横井紅炎さんに舞台まわりを落ち葉で覆い尽くしてもらい、柿の木を作ってもらいました。その木の下で二十五絃箏を演奏する荒井美帆さんの姿がとても印象的でしたね。


第10回公演 2009年12月9日(水)〜13日(日) 

作:み群杏子 演出:山口あきら 製作総指揮:川野誠一


「森蔭アパートメント」
於:てあとるらぽう

出演:田中香子 川野誠一 磯 秀明 俵 一 多奈田裕治郎 
   上月左知子 北出浩二 飯田未来 
花美術:横井紅炎(草月流華道家) 音楽:内田真裕子(マリンバ・パーカッション)


み群杏子さんの作品は、時代に置いてけぼりにされたような世界かも知れませんが、そこには人間的な営みと忘れられた言葉の温もりが溢れています。人肌の物語の中に描かれる人間の痛みが、読んでいる者の心に優しく響いて来ます。だから、読み終わった後に、すっと心に染み入る不思議な浸透力があります。この「森蔭アパートメント」は、み群作品で僕の一番のお気に入りです。この公演で最もお世話になったのが劇場オーナーでもある長門薫さんです。舞台美術のプランニング、製図、製作を一手に担って下さいました。森蔭アパートメントの景観は見事な一言です。音楽にはマリンバ奏者の内田真裕子さんをお招きしました。この作品には“木の音”って決めていたんです。


第11回公演 2010年11月10日(水)〜14日(日) 

作:み群杏子 演出:平野智子 製作総指揮:川野誠一


「マダムグラッセの家」
於:てあとるらぽう

出演:山本ふじ子 武藤兼治 森澤碧音 磯 秀明 
   田中美唯 川野誠一 佐度那津季 佐竹信哉
花美術:横井紅炎(草月流華道家)音楽:小川紀美代(バンドネオン)


色んな意味で節目となった作品です。演出にテアトル・エコーの平野智子さん、主演に東京ヴォードビルショーの山本ふじこさん子さんをお招きしての公演でした。この公演後、劇団大樹は活動休止期間に入りました。不思議なことに、劇団大樹は、5年毎に何かしらの転機が訪れます。そして、それがその時々で“活動を継続するエネルギー”となって来ました。そういった意味で、この2010年の活動休止も何らかの必然であるように思えてなりません。活動休止後も、僕は、俳優業を継続しますが、劇団大樹の作品は、これで一旦見納めとなります。