読売オンライン「河村常雄の劇場見聞録」というコーナーに「ひめごと」の記事が掲載されました。

サンショは小粒で
<見> 都心の雑踏から少し離れた、隠れ家のような小さな地下劇場で、お洒落な舞台を見た。12月10日から14日まで東京/東長崎の「てあとるらぽう」で上演された、み群杏子脚本の劇団大樹「ひめごと」である。退職教師/大沢未散(おぎのきみ子)と図書館司書/大沢翠(柿森ななこ)の母娘がつつましく営む下宿屋。秘密にされていた娘の父親のことが、ジャーナリストを名乗る青年/真木森生(川野誠一)の訪問で少しずつ明らかになっていく。未散の過去を知る古い下宿人/峠(納谷六朗)の存在が物語をスリリングにし、お手伝いの娘/久美(戸張智春)が舞台を明るくした。小劇場というと「若者の熱気」が通り相場だが、ここでは落ち着いた詩情が漂う。心地よい二十五絃筝(荒井美帆)と豪華な生け花(横井紅炎)が贅沢な空間を作り出す。ひめごとは負い目ではない。人生を豊かにする小道具かもしれない。演出は、青年座の山口あきら。

河村 常雄
1973年、読売新聞入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていた事から芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。