mimure kyoko
み群杏子 (星みずく)

マダムグラッセの家のこと・・・


劇団大樹さんから、「今年は“マダムグラッセの家”をやらせて下さい」という連絡をいただいた。昨年、本箱の整理をしていて、この作品のコピーを見つけ、これは川野さんが気に入るかもと、とりあえず送っていたものだ。まだ私がパソコンを使っていない時代に書いたもので、データーも残っていない。あらためて、読み直してみた。

自分でいうのもなんだけど、びっくりだ。何これ? 面白い… 私、こんなコメディも書けたんだ…

この作品を書きながら、次から次へと楽しいアイデアや言葉が溢れてきて、セリフの運びにワープロを打つ指がついていけなかったことを思い出す。

「ポプコーンの降る街」に始まって「短編集」「ひめごと」「森蔭アパートメント」と、劇団大樹さんが、私の作品を上演して下さるのは、今年で5度目になる。私は大阪に住んでいる。遠隔地で自分の作品を上演してもらうことがあっても、あまり観に行くことはないのだけれど、大樹さんの舞台はすべて観せてもらっている。最初は、川野さんのような一生懸命の人が作る舞台をぜひ観てみたいという好奇心からだったのだけど、舞台の完成度の高さにも感心してしまった。川野さんになら、安心して自分の作品を任せられるという思いは、回を増すごとに深くなってきている。

今年、劇団大樹さんは15周年を迎えるという。演出も変わり、新たな意気込みで舞台に取り組んで行きたいということをお聞きし、そんな年に、私の「マダムグラッセの家」を選んで下さったということを、とても嬉しく思っている。その意気込みをうけて、私も、今回、大樹さん用に、作品を少し書き直させてもらおうと思っている。

おしゃれでコミカルでちょっとビターな大人のメルヘン。

どんな役者さんが、どんな演出家が、この作品を調理して下さるのだろう。今からワクワクしている。

満月に誘われて、たどり着いた先はミラクルなホテル。さあ、召し上がれ。
グラッセ夫人のスイートなお菓子。あなたをミラクルスイートな世界にお連れします。

ハッピーで可愛い舞台になりそうな予感がする。


み群杏子。大阪府在住。初めは作詞家であったが、その後、劇作家として活動を開始。91年に「恋心のアドレス」で文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞、同作品を「俳優座」が初演。また92年にも「ポプコーンの降る街」が同賞を連続受賞し、同作品を「しし座」が初演。その後、Kiss-FM「Story for Two」のレギュラー執筆を担当。言葉のニュアンスを大切にしたポエティックな作風が特徴。生の悲しみおかしみを根底に持つ独特の作品世界を展開。02年には、初の戯曲集「微熱の箱」が出版される(宝塚出版刊/星雲社)。2007年、リーディングユニット「星みずく」を設立。


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